岡田克也副総理は2012年11月5日、増え続ける生活保護費について「『仕分け』の中で専門家を入れて議論したい」と述べ、16日からの事業仕分けの対象とする考えを示しました。
財務省は、2013年度予算編成で、生活保護費の給付水準を引き下げる方向で見直す方針を固め、厚生労働省と調整に入っています。生活費や住居費の減額などだけでなく、医療機関の窓口で
医療費の一部をいったん自己負担する制度の導入も提案しています。
財務省は国の財政状況が悪化する中、膨張に歯止めをかけることが急務だと主張するのですが、生活保護費全部を合わせても福祉予算の中で占める割合は下の図のようにわずかです。
生活保護をめぐる不正受給は確かに問題ですが、ことさらにそればかりマスメディアが報道していることで実際よりはるかに過大に国民の目に映っています。実際には、不正受給者は全体の1%にも満たない割合です。
そもそも、下のグラフのように、生活保護受給者は働こうにも働けない高齢者と傷病者・障害者の割合が圧倒的に高いのです。
最低賃金で働いた場合より支給額が多い逆転現象も一部地域で起きていますが、それは最低賃金が低すぎるのであって、内需拡大のためにも、せめて働けば生活保護より楽な生活ができるように、最低賃金を引き上げることを考えるべきです。
特に、就労による給与を得ていても、その額が生活保護基準に満たないことから、やむなく生活保護を利用している方々も多数おられます。そういう人々は、生活保護基準の引き下げがなされれば、生活保護費と最低賃金の低下により、両面から収入が低下するという事態も予想されるのです。
もし、生活保護基準の引き下げると、最低賃金の引き上げ目標額は下がり、「ワーキングプア」と呼ばれる最低賃金の水準で稼働するアルバイト・パートタイム・派遣社員・契約社員など、現在、労働者全体の35%を超える数千万人の非正規労働者の生活にも大きく影響を及ぼすのです。
生活保護基準は、地方税の非課税基準、国民健康保険の保険料・一部負担金の減免基準、介護保険の利用料・保険料の減額基準、障害者自立支援法による利用料の減額基準、生活福祉資金の貸付対象基準、就学援助の給付対象基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策にも連動しているのをご存知ですか。
2010年4月9日付の厚生労働省の発表によれば、わが国の生活保護の「捕捉率」(制度の利用資格がある者のうち現に利用できている者が占める割合)が下の図のように15.3%~29.6%と推計されています。少なくとも700~800万人は生活保護レベル以下の生活を強いられています。生活保護基準の切り下げは、生活保護を受けずに堪えている数百万人をも直撃するのです。(全文はこちら)